旅行記 ~ 愛知戦国絵巻 Day1 #3 稲葉山城
maoP第3話:稲葉山城
登城の道
1567年の稲葉山城の戦い。美濃の斎藤家を信長が攻め、信長が勝利を収めた戦いだ。
この戦いで信長は尾張と美濃を手にし、本格的に天下統一を目指すようになる。
そしてここで出てくる「稲葉山城」こそ、信長が岐阜と地名・城名を改める前の名前なのである。
歴史の表舞台に出ている時間は岐阜城のほうが長いが、個人的には信長の時代が好きなのもあって、稲葉山城のほうがしっくりくる。
だがここでは現代の表記に合わせて、稲葉山城ではなく「岐阜城」という表記を使うとしよう。
▲金華山の案内
前話では金華山ロープウェーで頂上駅まで登ったところで一旦区切ったが、
実はロープウェーから岐阜城までは、少しばかり階段の多い道を歩く必要がある。
▲金華山を岐阜城へ向けて登る
階段は基本的に緩やかだが、ところどころ、本格的な山のようなきつい傾斜のところもあった。
とはいえ観光客向けになっているので、手すりなどが丁寧に整備されており、
まったくもって無理難題だというわけではないのでご安心されたい。
▲この先に急な階段も
道中では織田家の家紋の旗刺しなどがあり、戦国ファンの心をちょくちょくくすぐってくる。
中間地点を少し過ぎたあたりには「閻魔堂」なるお堂が建っている。
▲これが見えると岐阜城ももう少し
これ、信長が魔王などと呼ばれたのでそのつながりかなと思って調べてみたら、どうやら関係ないらしい。
この閻魔堂には「木造閻魔王坐像」という像があるが、
1358年に『鬼門・悪病よけ』と『美濃の繁栄』のためにお堂を建立したうえで、像を安置したという。
なるほど、信長の時代より200年も前の話だ。
▲様々な効果がありそうだ
件の像は、格子状の壁に阻まれ、中を詳しく窺い知ることはできなかった。
閻魔堂の近くからは岐阜城が見えるポイントがある。
いろいろなパターンの写真を撮ったが、Googleのクチコミにあがった写真などと見比べて、他の人があまり撮ってなさそうだなーと思ったパターンはこれ。
▲木の間から岐阜城が見えるアングル
個人的なポイントは、あえて照度を落として、山道の暗さを強調したところ。
奥の岐阜城がより白く映えて見えるじゃろ?
閻魔堂を過ぎてさらに階段を登ると開けた場所に出る。ついに岐阜城の全景が目の前に現れた。
▲岐阜城の全景がついに
戦国時代、城への道に家紋の旗刺しがあったかは分からないが、
こうしてたくさんの織田木瓜を見ると、信長の居城がすぐ近くだなということを思わせる。
そして岐阜城へ向かう最後の上り坂では、左手に岐阜の街並みを認めることができる。
▲遠く滋賀県との県境まで見える山々
不意に現れたものだから思わず足を止め、ひとつ深呼吸。
汗が滴る体に、少しばかりひんやりした風が吹き抜けていった。
しばらく足を止めていると、自撮りを始める女性たちが現れたので、私はこの場を離れ静かにお城のほうへと歩を進める。
岐阜城へ向かう際は石垣のすぐそばまで近寄ることができる。石垣ファンにもたまらんなこれは。
▲精巧に削られ積まれた石垣
石垣を左手に見て最後のカーブを180度曲がると、岐阜城の入り口だ。
信長の見た景色
私は前話でぎふ登城きっぷを買っていたので、ここではそれと入場券を引き換えるだけ。
やはり岐阜城まで来るのならばぎふ登城きっぷを買っておくのが一番ベストだ。
城内はいくつか扇風機が首を回していたが、冷房などは効いておらず基本的に蒸し暑い。
▲信長と岐阜の歴史を紐解く
展示物は信長の行動を辿る文章での展示が基本だが、
上層階では信長の甲冑、教科書でよく見た人物画、そしてフランシスコ・ザビエルが遺した地図?のようなものが展示されていた。
特に重要な展示物は個人用の写真撮影も禁止だったので、正直記憶があやふやな点はご容赦願いたい。
そしてお城探訪の最大の見どころ、天守閣からの眺め。
▲東方面
岐阜城からの眺めで特筆すべきは、やはり眼下を流れる長良川だろう。
美濃の主、斎藤道三が嫡男の斎藤義龍に討ち取られたことでも有名な「長良川の戦い」。
その戦場の舞台となった大河をこのような歴史の舞台から眺めることができる、実に趣き深いものだ。
信長がいた時代とは建物の数も田畑の面積も違うが、長良川の大きさだけは昔から変わらないのかもしれない。
さて、それ以外の方面も見てみるとしよう。
▲南方面
南側は名古屋への街が地平線まで続いている。
右のほうにちらっと見える川は木曽川だ。南の長島で長良川と合流し、伊勢湾に注ぐ。
▲西方面
西のほうは西美濃の低めの山々を一望することができる。
▲北方面
北側は主だった観光名所はないが、山県市の街が山間を縫うように広がるのを眺めることができる。
郡上はもっと北西方面だし、樽見はもっと北東方面なので、この高さでは見ることは難しいだろう。
信長はこの場所から、千差万別の地形を見て、果たして何を思って天下統一を志したのだろうか。
この場所に実際立って何か感じられるかもしれなかったが、、、信長の野望は難しい。
しかし私なりの野望もある。
もっと旅をして、もっとたくさんの場所を訪れてたくさんの景色を見たい。そういう野望だ。
岐阜を見守る主
岐阜城を後にして、階段を少し下ってみると「岐阜城資料館」がある。岐阜城の入場券で入ることができる。
▲こじんまりとした岐阜城資料館
館内は非常に小さいが、2020年の大河ドラマ、『麒麟が来る』で使われた衣装や兜などが展示されていた。
大河ドラマを実際に見たという方は足を運んでみても面白いかもしれない。
そんな岐阜城資料館から崖沿いの道を進むと、「本丸井戸」跡を見つけることができる。
▲気を付けないと通り過ぎてしまいそう
付近には遺跡として質の高い石垣も残っている。石垣が大好きな人は必見だ。
お昼ごろに岐阜に着いたのに、金華山をまわるうちに時間はあっという間に経っていく。
ちょうど太陽の加減がいい具合に水を照らし、岐阜公園の噴水に小さな虹がかかっていた。
▲信長からの小さな手土産か
前話で確認したバス停より岐阜駅に戻り、最後に見ておきたいものがあったのでそちらへと赴く。
▲黄金の織田信長像
桶狭間、稲葉山と勝利を収め天下統一を目指すため岐阜に拠点を置いた織田信長。
今もきっと、何としても欲しかった美濃の地の安寧を願い、空から見守っているに違いない。