旅行記 ~ 出雲旅行 -トロッコと縁結びの旅- Day2 #3 雨の中の奥出雲おろち・往路
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第3話:雨の中の奥出雲おろち・往路
切符争奪戦の話
1998年から走り始め、2023年で引退が決まった、木次線名物「奥出雲おろち」号。
常に高い乗車率を誇り、観光資源の1つであり続けたため沿線自治体からは英雄レベルの扱いであるこの観光列車。
普段から切符が取りづらいうえ、引退が決まってからはそれこそ「10時打ち※」に打ち勝たなければ乗れないレベル。
そこにあるのは、団体ツアー客を含めてのし烈を極める争奪戦なのだ。
▲宍道駅にある奥出雲おろちの宣伝幕
かくいう私もおろちに乗るために毎日空席状況を「JR CYBER STATION」で調べる日々が続いていたが、
キャンセルか何か分からないが、とにかく8月4日(木)に「△」印があるのを発見し、
ホテルやら飛行機やらをとる前にまず切符の確保に奔走し、最後の1席を無事確保したのである。
※10時打ちとは、切符の取り扱いを開始する10時前に切符争奪戦に参加する乗客がみどりの窓口に並び、
10時になった瞬間に、全国のみどりの窓口の係員さんが一斉に切符を発券する装置を高速連打して
「運よく切符が取れるかどうかを懸ける」運命の一戦のことをいう。(オタク早口)
▲木次線といえばこの色だね
奥出雲おろちの切符争奪戦のことを書いたので一緒に触れておくが、奥出雲おろち号は割と途中下車する乗客がいる。
そして団体ツアー客も同じく、途中で降りる場合がある。(私が乗車した列車では三井野原で降りた)
つまり、始発から終点まで乗ることは難しくても、
途中駅から乗車することはできるかもしれないということを頭の片隅に入れておいてほしい。
そして備後落合駅から木次駅に向かう便は「○」印となっていた、つまりこちらは割と余裕があるようなのだ。
奥出雲おろちの雰囲気をなんとしても味わいたい、という人は、途中駅或いは復路からの参戦もプランとして残しておくとよい。
JR山陰本線 普通 西出雲行 : 玉造温泉駅7:59 → 宍道駅8:11
JR木次線 普通 木次行 : 宍道駅9:09 → 木次駅9:43
私が乗ったのは平日だったので、奥出雲おろち号(以下おろち)は木次駅から出発する。
まずは宍道駅に移動し、そこから木次線に乗り込み、木次駅を目指した。
▲木次線とおろちの旗
木次線の1両のディーゼルカーのロングシートの座席が一通り全て埋まるくらいには客を乗せ、汽車は定刻通り出発した。
・・・とはいえほとんどがおろち目当ての観光客だろうが。
▲加茂中駅~幡屋駅間の車窓
車窓は、、、絶賛田舎というか、谷を切り開いて無理やり田んぼを作ったような風景が続く。
加茂中駅などは駅前に比較的街が広がっているが、1人客が降り1人乗ってきただけだった。
奥出雲おろち、入線
列車は30分ちょいで木次駅に到着。
玉造温泉から木次までの切符を持っていたので一旦改札を抜け、今度はおろちの切符を見せて再び木次駅構内に入る。
ホームの外にある留置線には、青色のおろちが待機していた。
▲準備を整えるおろち
おろちは客車側から遠隔操作で機関車を操作できるという。
客車側にある運転席で機関車を操作して客車を押し、一旦木次駅の南側に抜けた後、今度は木次駅の2番線に入る線路に転線。
▲木次駅に入線する直前のおろち
数分停止した後今度は機関車を先頭にして、ゆっくりゆっくりとおろちは2番線に滑り込んできた。
▲2番線に停車中のおろち
▲奥出雲おろちの表記
▲青色のかっこいい機関車もばっちり撮影OK
おろちは客車とトロッコの2両をつないでいるが、2つの車両で1つの座席番号が使われている・・・
つまり、10Cを取ったならばトロッコの10Cと客車の10C両方を使えるというわけだ。
逆にいえば、2両つないでいるが実態は1両分の客しか取り扱っていないことになる。そらすぐ満員になるわけよ。
▲トロッコの車内
※客車側は4話の復路で紹介
木次駅では出発直前まで、木次周辺の名物を取り扱ったワゴンが販売に出ている。
どうせなので、おろちの地元の企業木次乳業が作っている「美楽」というヨーグルト(150円)を買って車内で頂くことにした。
▲こういうサービスも観光列車ならではだ
ちなみにこういう食べ物は先に食べるか、客車側で食べることをおすすめする。理由は後ほど説明する。
乗車記念に切符を取っておくのは鉄道オタクならではか。
▲乗車した証の切符
▲1枚のみ乗車記念証をもらえる
山を往く
JR木次線 奥出雲おろち号 備後落合行 : 木次駅10:08 → 備後落合駅12:36
備後落合方面からやってきた列車が到着するのとほぼ同時に、おろちは木次駅を出発。
この時はまだ雨は降っておらず、順調な滑り出しののちすぐにトンネルに出迎えられた。
▲列車は山の中をゆっくりと進む
人里離れた秘境路線が故、道中では渓谷美を楽しむことができる。
そして観光列車ならではの装飾として、
▲天井にはおろちのイルミネーションが
長いトンネルに入ると、天井のおろちが輝くという子供たちが喜びそうな仕掛けも。
途中の亀嵩駅(かめだけ)と八川駅では、昭和さながらのお蕎麦販売の様子があった。
▲亀嵩駅でのイベント(手前のおじちゃんはぼかし入れてます)
このお蕎麦は先に予約しておくことで、駅到着時に代金を払って受け取ることができるというイベントである。
コアなファンの間では、亀嵩駅のお蕎麦は駅長さんが作っていることでも有名だ。
私は下調べが足りなかったのですっかり傍観者であったが、
私の隣に座っていたおじちゃんは2回ともしっかりフラグを回収していた。
おろちはぐんぐん山の中へ入っていく。
隣にいたおじちゃんはお蕎麦を食べるため客車側に移動した。
それもそのはず、
▲木々がトロッコを飛び越える場面も
木の枝がトロッコ列車の柱にあたり、木の葉や虫が列車内に散乱するのである。
小さな羽虫やアオバハゴロモ、カメムシなどが多いので危害を加える虫はいなかったが、
流石にお蕎麦を食べている途中にそやつらに邪魔されるのは気分がよろしくない。
列車は木次駅を出て1時間40分程度で、3段スイッチバックで有名な出雲坂根駅に到着。
▲出雲坂根駅
往路では5分しか時間がないので、ほとんど散策できない。
駅ホームに降りて数枚写真を撮ったらもうベルがなり、出発だ。
おろちは山を登るため折り返して一旦引き込み線に入った後、再び折り返し三井野原方面を目指す。
▲出雲坂根のスイッチバック
この構造はGoogle MAPで線形を見てもらったほうが手っ取り早いのでそれに任せる。
絶景・おろちループ
出雲坂根駅を出ると徐々に雨が降り始め、トロッコの内部にも雨風が吹き込むようになってきた。
一時期は土砂降りのような強い雨も降ったが一瞬の出来事だったので、おろちの運行に支障はなかったようだ。
▲トンネルの中は霧が立ち込める
出雲坂根駅から三井野原駅の間はかなりの急勾配と小さなトンネルが続き、おろちも慎重に慎重に登っていく。
その出雲坂根駅と三井野原駅の間には、おろち最大の見どころである「おろちループ」が車窓右手に現れる。
▲遠くに赤い橋が見えるだろうか
写真中央上部に赤と白の橋が映っているが、あれが「奥出雲おろちループ」橋である。
列車は約10分をかけ急勾配を登り、車掌の案内があったその直後、
▲赤色の橋が木次線の下に
先程はかなり見上げる位置にあったループ橋が、今度は見下ろす位置に現れるのだ。
この絶景ポイントでは老若男女みな総立ちになり、シャッターをしきりに切っていた。
ループ橋を過ぎると中国山地のさらに奥へ奥へと入り、おろちの旅も終演が近づく。
三井野原駅で客車の先頭を陣取っていたツアー客15名ほどが降り、乗車率は70%程度に落ち着く。
いや、ここまできたら最後まで乗れよw
▲木次線名物?の制限25
▲日本最大級の秘境駅へ突き進む
柚木駅を過ぎると雨が強くなり、そして民家もほとんどなくなり、、、いや、ここまでもほとんどなかったが、
より一層そういう影は消え、鬱蒼と生い茂る森が続く中をおろちはゆっくりと走る。
12時36分、おろちは終着の備後落合駅に到着。
▲備後落合駅に到着
▲駅舎からおろちを見る
▲おろちを撮影するため群がるオタクたち
備後落合駅に降りてみて改めて感じたが、まじで本当に何もない、何もないったら何もない。
こんなところでも昔はある程度家があり、駅員さんも常駐していた歴史がある、、、なんて考えられないレベルだ。
さて、ここまでだいぶ長くなってしまったが、復路は復路で書くことがいっぱいあるので次回に任せるとしよう。