旅行記 ~ 箱根三昧Day1 #2 登山鉄道の本気
maoP第2話:登山鉄道の本気
湯本の送迎
前話で、新宿からロマンスカーで箱根湯本までやってきた我。
ここから箱根登山鉄道のあれこれを駆使して、強羅、早雲山、そして大涌谷を目指す。
そんなかんじで箱根を堪能するときに役立つのが、この「はこねフリーパス」5000円。
一瞬高いと思うかもしれないが、箱根を一通り回ると5000円は軽く超えてしまうので普通に元が取れる。
鉄道だけでなくバスや遊覧船、ロープウェイも使える、まさしく「さいきょうのかーど」なのだ。
まぁ使い方次第ではあるが、買った日とその次の日まで有効なので、存分に使い倒すのがよき。
▲はこねフリーパスで箱根を遊びつくすのだ
但しこの切符、1つ(こういっては失礼だが)罠がある。
箱根の街を循環しているバスには2種類あるのだが、箱根登山バスは使えるが伊豆箱根バスはこれを使えない。
しかし箱根園など、伊豆箱根バスのみバス停があるところもある。
そういうところは、タクシーを使うか伊豆箱根バスを使うなどでフォローするべし。
▲強羅行の列車
さて、フリーパスも買ったところで、早速箱根登山鉄道の赤色の列車に乗り込んでいくとしよう。
箱根湯本から強羅まではおよそ40分かかる。
急な勾配の待ち受ける坂を頑張って登っていくのでこれは致し方ないだろう。
そんな勾配を登る準備のためか、発車前から列車は大きく唸り声を上げ続けていた。
3両の列車は多くの観光客を乗せ、9時37分、箱根湯本駅を定刻通りに出発。
▲駅員さんのお見送り
出発時には、駅員さんが特製ボードを用意してお見送りをしてくれた。
観光地ならではの送迎は、やはり心温まるものである。
3段スイッチバック
箱根登山鉄道 強羅行 : 箱根湯本駅9:37 → 強羅駅10:18
列車は箱根湯本を出発するといきなり温泉街を離れ、山道をぐんぐん登っていく。
▲美しい渓谷がすぐさま登場
走行中は、ポイントごとに観光案内のアナウンスが流れる。
流石に中身の詳細は覚えていないのでここには書き起こせないが、とにかく多くのアナウンスがあったことは記憶している。
▲出山鉄橋。先程走行した鉄橋があんなに下に。。。
これだけの山をものの数分で登ってみせるその底力、これが鉄道の本気というわけか。
ところで箱根登山鉄道の一番のポイントといえば、「スイッチバック」を駆使した箱根の山登りである。
スイッチバックとは、勾配がきついときに折り返し設備をうまく利用して坂を上っていくシステムのことである。(詳細は後述)
列車は急な勾配を登るのが非常に苦手だというデメリットを、
前と後ろ両方に運転台があるので簡単に折り返しができるというメリットでうまくカバーした形だ。
▲出山信号場。登ってきた坂道が右手に見える
折り返して進むので、写真のように登ってきた線路が車窓から見えるのが実に面白い。
そしてその線路の勾配が非常にきついことも見てとれる。
線路が見えるということは、運がよければ列車と並走することもある。
▲運がよければ降りてきた列車と並走するシーンも
こちらが登りでスイッチバックのところに向かうのと同時に
下りでスイッチバックのところに向かう列車がばったり会うと、車窓から並走するシーンが見える。
車内からは思わぬ、というか全く予期せぬ出来事に歓声があがった。
▲上大平台信号場。勾配が非常にきつい
このスイッチバックは技術の発展などにより、より長いトンネルを掘ることができるようになったりしたことでだんだんと使われなくなっていった。
日本全国にもわずかな箇所にしか残っていないが、この箱根登山鉄道ではなんと3か所も設置されている。
「出山信号場」、続いて「大平台駅」、最後に「上大平台信号場」の3か所。
文字と写真だけではうまく伝わらないかもしれないが、実際に乗車してみると一種のアトラクションのような感覚である。
列車は一番勾配のきつい大平台付近を越え、あとは強羅へひたすら坂道を登っていくだけとなった。
▲見える車窓はいつも美しい
途中の小涌谷駅で列車交換。対向列車はこれから3段スイッチバックを迎える。
列車交換を待つ間、ホームでは親子連れたちが写真撮影に勤しむ姿も見られた。
▲小涌谷駅での列車交換
ここまでくると強羅まではもう少し。
彫刻の森駅を過ぎ、数分で強羅駅に到着。
▲強羅駅に無事到着
強羅駅にもいくつか名所はあるらしいが、降りた観光客のほとんどは、早雲山方面のケーブルカーへ乗り込む。
箱根の交通網はケーブルカー、ロープウェイ、そして大涌谷へと続いていくが、今回は一旦ここまでとしよう。
大平台駅でスイッチバックを眺める
ここまでスイッチバックを列車内から眺めてきた。
しかし内側からだけだと、どうなっているのかイメージをつかみづらかったのではないだろうか。
▲大平台駅
ところ変わって、立っているのは夕方の大平台駅。上述の通りスイッチバック可能な駅である。
なぜここにいるのかは長くなるし特に面白い話でもないので割愛する。
改札を抜けホームに出てみると、2本の線路が用意されていた。
森深い山のなかにひっそりとたたずむ、小さな駅である。
▲大平台駅のホーム
しばらく待っていると、箱根湯本方面から列車がやってきた。
小さく咲くあじさいの傍をゆっくりと通過。
列車は左側の線路から一直線に大平台駅に進み、客取扱をするため駅に停車する。
▲強羅行の列車がやってきた
駅に停車してすぐ、ポイントが切り替わる「ガシャッ!」という大きな音が駅に響いた。
乗務員はホームを歩いて前と後ろで入れ替わり、赤色の最後尾を示すライトが白色のライトに変わる。(車と同じ)
列車は出発準備を整えるとやってきた方向に進む。
今度は真っ直ぐではなく、切り替わったポイントで進行方向を変え、右側の線路を進んでいく。
▲強羅方面へ坂を登っていく
お分かりいただけただろうか、これがスイッチバックの原理である。
内側から進行方向の忙しない切り替わりを楽しむもよし、外側から鉄道遺産を眺めてみるのもよし。
景色だけにとらわれない、先人の知恵を楽しむのもまた一興だ。