まめも!(個人ブログサイトです)

Kanamemo Photo 工事中 工事中 Blog About

ブログ ~ 飯田線の旅Day #13 飯田線回顧録

maoP

2021年7月31日~8月4日の飯田線の旅、最終話です。
旅行に出かける皆さまに向けたメモとしても役立てば幸いです。
拙い文章ですがどうぞお楽しみください…。
※執筆日:2021年8月20日

※第1話はこちら
※前話はこちら

最終話:飯田線回顧録

あらすじ

5日間に及んだ飯田線の旅。その旅の基軸になったのは飯田線
昔から高山本線や山口線などの山岳路線に憧れ、そして乗り潰してきた私にとって、
飯田線はやはり同じように是非乗りたい路線の一つなのであった。
これまでの12話ではあえてほとんど飯田線に触れてこなかったのは、ここで一気に紹介したかったため。
乗り鉄であるならば1度は夢見る飯田線に、是非読者も憧憬してほしい。
※本記事に掲載している時刻は全て2021年8月のものです。時刻や運行状況は常に変わりますので、最新情報を仕入れて旅行をお楽しみ頂ければ幸いです。

長野県辰野駅~愛知県豊橋駅までの全長約200kmの長大路線、飯田線
伊那地域を走る列車のいくらかは伊那松島駅止まり、
或いは辰野駅からさらに北、中央本線に乗り入れ岡谷駅や松本駅、上諏訪駅を発着している。
反対、豊橋方面の列車はほとんどが豊川駅、或いは本長篠駅止まりとなる。
途中飯田周辺は飯田駅や天竜峡駅、中部天竜駅で区切られるものもいくつかあり、乗り換えが必要となる経路もある。
そんな飯田線を始発から終点まで走り切る列車も日に数本設定されており、所要時間は7時間にも及ぶ。
例えば豊橋を10時42分に出る岡谷行の普通列車は、
本長篠:11時42分
中部天竜:12時48分
天竜峡:14時13分
飯田:14時43分
駒ヶ根:16時13分
辰野:17時20分
と経て、終点岡谷駅には17時33分に到着する。
昼前に出ても終点まで乗り通すともう夕方どころか晩御飯の時間である。
東京駅を出発した新幹線は博多駅なんてとうに到着し、九州新幹線に乗り換えて鹿児島県に入っている頃合いである。
▲天竜峡駅にて
ちなみに私は今回飯田線を端から端まで乗り通す列車には乗っていない。
飯田線を乗り通すことも大事なことではあったが、それよりも周辺探訪に力を入れた形、そこはご容赦願いたい。

なぜ飯田線はのんびりとしているのか

200kmの長大路線ではあるが、それにしても7時間というのは実に時間がかかりすぎるのもまた事実である。
私はこの路線に乗るまでは「なぜだろう?」と思っていたのであるが、飯田線を乗り潰す中途、
いくつか「なるほど」と思ったことがあるので記しておこうと思う。

1.飯田線は駅数が多い まず1つ目であるが、飯田線はめちゃくちゃ駅の数が多い。その駅数94駅
首都圏のように人がたくさんいる地域ならまだしも、ローカル線でこの駅数は非常に多い。
参考までに西日本の木次線は約80kmで18駅しかないし、
159kmの芸備線は44駅、259kmの北海道宗谷本線は(駅が大量に廃止されたとはいえ)41駅である。
これは飯田線自体が元々「私鉄」だったからなのだ。
京急などは並行するJR線に比べて圧倒的に駅数が多いが、それと同じ、つまり地域密着型だったことが挙げられる。
豊橋駅から大海駅の間は「豊川鉄道」、
大海駅から三河川合駅の間は「鳳来寺鉄道」、
三河川合駅から天竜峡駅の間は「三信鉄道」、
天竜峡駅から辰野駅の間は「伊那電気鉄道」といった具合で、複数の私鉄がばらばらに線を建設。
それを1943年に国有化して飯田線となり、今の姿となった。
200㎞の間に94駅ということは単純計算で2kmに1駅置かれていることになる。
駅に停車する回数が多ければ必然的に列車は 停車する回数も多くなるので進むスピードも遅くなる ということだ。
▲飯田駅にて

2.停車時間が長い 2つ目であるが飯田線の伊那地域や山岳地帯の駅のほとんどには、駅に改札がない
ではどうしているかというと、車掌さんが、降車した乗客の切符や定期券を逐一確認しているのである。
そのため、1つの駅の停車時間が30秒とかで済む首都圏等と異なり、 駅で1分~2分停車する こともよくある。
飯田線の詳細な時刻表を見てみると、特に伊那地域では
ほとんどの駅で1分以上の停車時間がある。これはおそらくこれが理由であるのではないだろうか。
ちなみに車内検札ももちろんあるが、これは天竜峡駅から先など人が極端に少なくなる地域に限られていたように思う。
やはり伊那地域ではそれなりに人の乗降があるため、
上記の通り駅間距離の短い飯田線では車内検札では間に合わないので、降車時に一括で確認するようにしているのだろう。
駅に停車する時間も、1駅30秒伸びるだけでそれが50,60駅となれば数十分単位で時間がかかることになる。
▲為栗駅から天竜橋

3.速度が遅い そして3つ目。 飯田線はとにかく速度が遅い。
飯田線の天竜峡駅~本長篠駅間はほぼ山岳路線といって違いないので速度も非常に遅くなるのはうなずけるが、
天竜峡駅から辰野駅の間も非常に遅いことにびっくりした。なんなら伊那地域の方が遅い
乗ってみると理由がわかるのだが、「線路が高規格でない」のだろう。
カーブが非常に多く、くねくねした線形であるため速度を出せないうえ、
曲がる際には常にきーきーと甲高い音を立てている。線路はあまり品質はよくないものと思われる。
この二重苦により飯田線のほとんどの区間では速度を出せない。
体感的には50km前後で常に走っている感覚。並行する車と同じくらいの速度で抜きつ抜かれつというかんじだ。
そのため例えば飯田駅から駒ヶ根駅の間は40km程度しかないのだが、1時間半もかかる。
飯田線南側、本長篠駅から豊橋駅間は伊那地域に比べると早いスピードで走っているが、残念ながら時間的には遅く、30kmを1時間で走る。
距離時間は山手線とほぼ同じだが、駅数は山手線の方が多い。駅間速度の遅さが伝わるだろうか。
そしてその速度の遅さは線内を走る特急伊那路も例外ではないのである。。。
▲三河川合駅にて

4.基本的に単線である 最後に4つ目。 飯田線のほとんどの区間が基本的に単線であること。
伊那地域では1時間に1本程度あり、天竜峡駅から先の山岳地帯でも2時間に1本程度とそれなりに本数がある。
そんな路線で単線であるということは行き違いの列車交換も比較的頻繁に行われるということだ。
例えば先程の豊橋10時42分発岡谷行の普通列車を例に使うと、
本長篠駅では17分、伊那小沢駅や天竜峡駅で4分、飯田駅で7分、駒ヶ根駅で8分。
それ以外にも2分3分停車駅が多数・・・と、比較的頻繁に長時間停車がある。
いやこれを長時間停車というかは微妙だけれども、少なくともすぐにドアが閉まらない駅が多数あるのは事実だ。 ▲長篠城跡から313系

これら複数の要因により飯田線がかなりの低速で走っていることをご理解頂けたと思う。
以下では実際に飯田線に乗車したときの車窓や様子などの記録を、写真をメインに区間別に残しておこうと思う。

辰野~駒ヶ根

車窓からは田園風景が広がる。
ただ北海道の石狩平野のように完全に田園地帯かというとそうではなく、
ちゃんと街並みが形成されている中に田園も共存している、という印象だ。
▲伊那新町駅~羽場駅間
▲羽場駅から車窓
伊那松島の近くに車庫があるらしく、伊那松島から天竜峡までは1時間に1本程度本数がある。
飯田からやってきた列車は伊那松島止まりのものが多くある。
但し伊那松島から北に向かうにあたって本数が激減することはないのでそこは比較的安心。
▲宮田駅~大田切駅間
伊那松島、伊那市や駒ヶ根周辺はさすがに栄えており、かなりの乗降客数があったが
それ以外は昼も夕方も人が数人乗り降りするくらいであった。

駒ヶ根~飯田

個人的に一番進むスピードが遅く感じられたのがこの区間。
先程も書いたが、数十分停車する駅があるわけでもないのに40km進むのに1時間半かかる路線はここくらいしかないだろう。
▲駒ヶ根駅
▲駒ヶ根駅ホーム
主要駅でも下車時切符の確認は車掌が行う。
また跨線橋はなく、踏切を渡る形となるのもまた田舎の駅らしさが残る。
▲飯島駅~伊那本郷駅間
途中各駅はそれなりに乗降客数がある。
駒ヶ根周辺の各駅、飯島駅、伊那大島駅、市田駅などでは学生の乗り降りもあり多くの人が利用している印象を受けた。
▲七久保駅から。引き続き田園地帯は続く。
飯田線は基本2両編成で運行されるが、この辺りは立客も出るくらいには車内は混雑する。
但し近距離での利用が多いのか、すぐに降りる人も多い印象を受けた。
長距離移動はそれこそ私のような旅行者くらいだろうか。
▲七久保駅~高遠原駅間
▲伊那田島駅。綺麗な夏空。
そして特徴的なのが駅名標の市町村がころころ変わること。
たくさんの市町村が伊那地域にはあり、おまけに東西に広がっているので1駅2駅過ぎたら次の町に移動していたなんてことはよくあるのだ。 ▲上片桐駅~伊那大島駅間、片桐松川を渡る。

飯田~天竜峡

難読地名である「」(かなえ)駅があるのがこの区間。飯田駅から数駅で到着。
▲鼎駅
▲時又駅~川路駅、夕暮れの車窓
最初は飯田の街を走っていくが、駄科駅あたりから天竜川が左手にやってくる。いや、飯田線が天竜川に近づくが正解か。
飯田線は少し小高い丘を走るので、車窓からは天竜川が非常に綺麗に見える。めちゃめちゃおすすめ。
鼎駅も南に向かう場合は進行方向左手にあるので、この区間は左手側に座ることをお勧めする。(岡谷に向かう場合は右手側) ▲時又駅~川路駅、天竜川を望む

天竜峡~中部天竜

ここからは打って変わって一気に山岳地帯となる。
そのため列車の本数も2~3時間に1本と激減する。
天竜峡駅を過ぎるといきなりトンネルに入り、千代駅、金野駅といった秘境駅続出地帯となる。
▲天竜峡駅~千代駅、天竜峡大橋
▲唐笠駅~門島駅間
ちなみに天竜川は天竜峡駅を過ぎてすぐに横断するので、ずっと進行方向右手側にある。(岡谷に向かう場合は左手側)
天竜川は写真のように山々の緑が反射し、川面が緑色に。

飯田方面から乗ってきた学生は途中の温田駅で下車する。
そのため温田駅を過ぎると人が一気にいなくなり、乗る人はほとんど秘境駅目当ての旅行者だけになる。
▲温田駅~為栗駅間、学生が降りてがらがらになった車内
▲為栗駅~平岡駅間、平岡ダムにかかる羽衣崎橋
▲同じく為栗駅~平岡駅間
▲小和田駅
秘境駅がある小和田駅はこの区間になるが、
しれっと小和田駅手前で飯田線は長野県から静岡県浜松市に入る。
大嵐駅を過ぎると天竜川とはお別れになってしまうが、それまでの景色は圧巻の2文字、是非ともカメラに収めたい。
飯田線内にはたくさんのトンネルがあるが、その大部分を占めるのもまたこの区間。
▲佐久間駅
長いトンネルを抜け佐久間駅に到着したら中部天竜駅はすぐ目の前である。
中部天竜駅の直前、一瞬だけ再び天竜川が目の前に現れる。
▲中部天竜駅
▲中部天竜駅舎
▲中部天竜駅にて213系

中部天竜~本長篠

中部天竜も全く大きい街ではなく、川を挟んでちょっとした区域に住宅が広がるのみなので、
列車は駅を離れるとすぐに山岳地帯の風景となり、浦川駅を過ぎると一層山間を進む路線の色合いが濃くなる。
▲早瀬駅~浦川駅、大千瀬川を望む
中部天竜からしばらく西、東栄駅直前で飯田線は静岡県から愛知県に突入する。
▲東栄駅、駅舎が面白い
このあたりは駅の周りにちょっと集落がある程度で、基本的にはずっと森、山のオンパレード。
但し比較的拓けているのは車窓左手側(岡谷に向かう場合は右手側)になるので、
湯谷温泉などできるだけいい車窓を観たい場合はそちらに座るとよい。
▲湯谷温泉駅にて
三河大野駅を過ぎると少しだけ平野が現れ、本長篠駅に到着。

本長篠~豊橋

本長篠からは本数が戻り、1時間に1本程度になる。
長篠の戦いの舞台となった設楽原を列車は突き進む。
三河東郷駅まではカーブが多く速度はあまり出せないが、それより東は線路の形も綺麗になりかなりの速度を出して行く。
▲長山駅
各駅で続々と乗客が乗り込んでくる。
学生たちも大量に乗り込んできて2両編成の列車はあっという間に満杯になった。
豊川駅からは15分に1本とすっかり都会の風景になり、一気に様変わりする。
つい1時間前まで山岳地帯を走っていたとは思えない車窓が広がる。
▲豊川駅
▲下地駅~船町駅間、豊川
伊那の方からやってきた列車はほとんど途中の下地駅と船町駅を通過してしまうようだ。
東海道本線がやってきて豊川を渡ると豊橋駅はもう間もなくとなる。
▲終点豊橋駅

あとがき

今回は飯田線の旅の様子をお届け。
私長野は松本には訪れたことがあったのだが、長野県南部、特に今回訪れたような伊那地域には訪れたことがなかったので非常に楽しい旅行となった。
伊那地域だけでなく諏訪方面、三河方面もしっかり探訪できたことはとても嬉しかった。
しかし飯田線は私が訪れた約2週間後、豪雨が直撃し多数の被害を受けてしまう。
山岳路線は被害を受ける場所も多くなりがちで、復旧に時間がかかるうえ、
今度いつ被害を受けて予定が狂ってしまうかもわからない。
例えば肥薩線なんかはもう復旧できないのではないかというレベルで甚大な被害を受けてしまった。

実際今回の私の旅行も多くの雨に見舞われ、
正直いつ路盤が流出するか、いつ倒木が発生するか、ひやひやものであったことは間違いない。
最近の気象は極端だから、車窓や風景なんかも、土砂崩れなどでいつ景観が変わっても何らおかしくない。
景色はいつまでも残っているわけではない。
美しい景色は、それだけ自然の猛威にさらされることによって美しいものとなっているのである。
私の父も、予定だけ立てて旅行に行く機会を逃し、結局乗りたかった根室本線全通の夢を果たせなくなりつつある……そんな実情を傍で見てきた。
行けるときに行っておくというのは旅行において非常に大事な考え方であると、私は思う。

ここまで計13話、読んでくれた皆様誠にありがとうございました。
また検索などでこのページを偶然知り1ページだけ読んだなんて方は、是非本旅行別話も読んで頂けると幸甚です。
最後に本旅行の時刻表を地図と共に載せておきます。
ではまたどこかでお会いしましょう!

2021/7/31(1日目)

2021/8/1(2日目)

2021/8/2(3日目)

2021/8/3(4日目)

2021/8/4(5日目)

第1話:中山道を往く
第2話:大雨の木曽路
第3話:下の春と秋
第4話:眼前に広がるは
第5話:ソースカツ丼の誘惑
第6話:三河川合の失敗
第7話:長篠
第8話:湯谷の町
第9話:静寂の秘境駅
第10話:突き抜ける、飛行機雲
第11話:いなり、うなぎ、一期一会
第12話:豊川稲荷
第13話:飯田線回顧録
他の旅行・鉄道系ブログはこちら